第3節 ポケットモンスターのネットワーク




 今,子供たちの間で,『ポケットモンスター(ポケモン)』というゲームが爆発的に流行している。ゲームソフトの売り上げは発売以来300万本を超え,TVアニメ化されたり,様々な関連グッズが発売されたりと,その人気は,中高校生から大人にまで広がる勢いを見せている。

 ゲームは,いわゆる『ロールプレイングゲーム』というタイプである。主人公は,自分のモンスターを敵と戦わせることによって育て,様々な『イベント』を『クリア』しながら冒険の旅を続ける,というストーリーであるが,この中の重要なアイテムとしてコンピュータネットワークが登場する。



ストーリーは同じだが,場所によって
登場するポケモンの違う,2種類が発売されている。



 主人公は,野生のポケモンに出合うと,これと自分のポケモンを戦わせて弱らせ,『モンスターボール』の中につかまえる。一度捕まえたポケモンは,自分のポケモンとして次からの戦いに参加させられるのだが,一度に手元に置けるポケモンは6匹に限られている。そこで,手持ちのポケモンがいっぱいになると,子供たちは主人公を手近な町にある『ポケモンセンター』という建物に向かわせる。
 『ポケモンセンター』には,その一角にコンピュータが設置され,電源を入れると,別の町にいる『オーキド博士』のコンピュータに接続できるようになっている。そして,捕まえたポケモンを,コンピュータネットワークを通して,博士のところに転送し預けるという仕組みになっているのである。
 つまり,子供たちはバーチャルな世界でコンピュータネットワークをすでに体験しているのだ。


 また,『ポケモン』は『ゲームボーイ』という携帯ゲーム機用のソフトであるが,2台のゲームボーイを通信ケーブルでつなぐことによって,捕まえたポケモンのデータを交換できるという機能が付いている。


 現実の世界においても,コンピュータやネットワークは,子供たちにとって何の抵抗もないメディアになっているばかりではなく,一部の子供たちには,積極的に活用できるメディアにさえなっているのである。

 学校においてコンピュータに対して抵抗感を持っているのは,もはや,新しいメディアへの対応に不安を感じている大人(つまり教員)だけといってもいい状況になっている。「自分が使えないから」「使いたくないから」という理由でコンピュータの活用に目をつぶることは,もはや許されないといっても過言ではない。



 ただし,「何が何でもコンピュータを使わなければならない」という思いにとらわれる必要は,さらさらない。コンピュータが人間の生活を豊かにし手助けをするための道具である以上,コンピュータを使うことに振り回されて,かえって効率が悪くなったり,学習のねらいがそれてしまったりしては,本末転倒である。コンピュータの特性は何か,学習の中に,それが生きるような学習課程になっているかを,しっかりと見極める必要がある。


 メディアとして『紙』を使う方が有効な場合に,無理にコンピュータを使う必要はないし,調べたことをまとめるような学習で,全員がコンピュータを使う必要もない。子供自身が,コンピュータを活用するよさを感じながら,選択して使おうと考えるかどうかの方が重要である。「使ってもよし,使わなくてもよし」といったスタンスで気楽に臨む方が望ましいのではないかと考えている。

 教師にコンピュータを活用する技能が十分身に付いていないことは,確かに大きな不安要素である。しかし,コンピュータの活用を中心とした情報教育の目的が,コンピュータの技能習得ではない以上,いつまでもためらってばかりいるよりは,できることからやってみようという姿勢が大事である。子供たちは,必要な技能は何とか自分たちで身につけていくものである。教師は,技能は子供に任せて,どうやったらそれを有効に活用できるかを考えていけばよいのだ。

 情報の内容を考え発信するのも,その手段を選択するのも子供自身であって,子供がそういうことを選択できる能力を身につけられるよう支援することが大事である。そういう情報活用能力の高まりを演出できるような授業のデザインを考えることこそが教師の役割である。





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