第2項 金大附小の総合学習実践事例


6年総合(環境)   野田山が知らせる私たちの環境


(1) 単元について

 学校の各教室から見渡せる場所に位置する『野田山』は,加賀百万石前田藩祖利家の兄の前田利久の墓所を中心に墓地公園が設けられ,緑豊かな姿でたたずんでいる。人間の手が加わらない自然植生そのままの状態のところも多く見られる。

 そんな自然豊かな野田山に,近年,立ち枯れた木が見られるようになってきている。そういう野田山の姿を子供たちが目にしたとき,子供たちは,「多くの緑の中に,なぜ立ち枯れた木が存在するのか」「なぜ枯れ方に違いがあるのか」という疑問を持ち始めた。

 教師自身は,「日当たり」「煤煙」「虫による病気」「土の性質」などの原因が関係しているとし,豊かに見える野田山の自然の中で,子供たちが立ち枯れた原因を追究していく過程が環境という視点に結びつくと予想した。野田山の木が立ち枯れているわけを表現し続けることで,立ち枯れから環境の変化を示すサインが送られていることに気づき,身近な自然の中にそんなサインを見落としていないか関心を持って見ていこうとする「環境への見方に対する価値観」が深まると考えたのである。


 野田山の枯れ木は様々な枯れ方の様相を示している。その原因を1つに決めかねるのは当然であるが,緑の多い野田山から環境について考えていくことによって,自分たちの住む地域全体に目を向け,先に挙げた価値観にせまることができると考えている。



(2) 体験活動について

 本単元では,以下の三つの体験活動を取り入れることによって,子供たちの表現力を高め価値観を深めることをねらっている。

・野田山の立ち枯れている木を見つける活動  子供たちは,百年を有に越える大木を目にし,自然の美しさやスケールの大きさを実感するとともに,立ち枯れた木の存在に気づくことから,野田山の自然が知らせている環境の変化に目を向け,「どうして立ち枯れた木があるのか」という問題意識を抱いていった。
・立ち枯れている木々の原因を調べる活動と発表する場(セッション)の設定  子供たちは,例えば,立ち枯れている木々の原因を「つるが巻き付いたため」と考えている子供たちの中でも,「木をしめつけたから」「養分を吸い取ったから」などと自分なりの見方から根拠をもって調べる。そういった一人一人のイメージに沿った調査活動をすることや,調べたい原因のもととなっているイメージを情報交換することによって,環境を様々な見方や考え方で見ることができた。
・ゲストティーチャーから自然の見方を聞く活動  木が枯れたわけをゲストティーチャーから聞くことによって,一人一人の想いに沿った追究をしていくなかから見つけた調べ方や見方を広げたり深めたりすることをねらっている。そして,自分と自然との関わり方を意識し,自分たちの住む身近な自然にも関心を持って見つめることができるようになると考えている。




(3) 学習の流れ

 子供たちは,木立が枯れ始めた原因について,自分なりの観点から予想を持ち,様々な方法で自分の予想を確かめるよう,調べる活動を進めてきた。子供たちは,立ち枯れの理由として次のような予想を抱いている。 

・空気の汚れ  ・土の汚れ,性質の変化  ・酸性雨  ・害虫の発生

 これらの予想をもとに,植物や土壌の性質(どういうときに植物は枯れるか。野田山の現状はどうか。),植生の歴史的変化,野田山周辺の酸性度,害虫の種類・分布と被害など,それぞれの視点から班毎に調べる活動に当たってきた。調べ方も,資料にあたるばかりでなく,実際に野田山へ出かけてビデオによる取材を行うなど,その取組は意欲的であった。


 公開授業では,子供たちが調べてきたことを出し合い,その内容を検討し合うことによって,立ち枯れの理由を様々な視点から考えていた。また,実際に野田山から採集した植物を提示したり,地域の方から聞き取った話を提供したりするなど,生活体験をもとにした自分の考えを語ることができた。

 また,授業の後半ではゲストティーチャーが登場し,害虫(マツクイムシ)の生態と発生状況,酸性雨の被害といった野田山の自然の現状について,専門家の立場から説明した。説明のあとには,児童からの質問があり,資料等を調べても解決できなかった疑問について,明快な回答を得ることができ,野田山の環境に対する理解を深めることができた。




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