第2章 総合学習とはどのような学習なのだろうか  


第1節 金沢大学教育学部附属小学校での取り組み


第1項 総合学習はどのように位置づけられているか


(1) 総合学習で高めたい能力

 金沢大学教育学部附属小学校(以下金大附小)では,平成5年度より「自己創造的表現」を主題として研究を行ってきた。2年次までは,道徳や教科学習の中で自己創造的活動の高め方を追究してきたが,3年次からは中央教育審議会答申の「総合的な学習」の方向に沿った形で,国際化,情報化,科学技術の発展,環境問題の深刻化などの社会の変化に対応できる子供の育成に重点を置き,総合学習を中心にすえた研究に取り組んでいる。

 平成9年度研究発表会は5月29,30日の両日に開催された。

近代的な作りの校舎



 金大附小では,総合学習を「教科の枠を越え,子供の興味・関心を大切にした自主的追究活動を通すことや,今日的課題性のあるテーマを設定した体験的活動を通すことで,社会の変化に対応できる力や態度を育成する学習」ととらえている。

 また,実際,総合学習に取り組むにあたり,二つの活動を考えている。

 一つは,子供一人一人が自らテーマを設定し,調べていく活動である。これを総合学習Aと呼んでいる。この活動に取り組むことで,社会の変化に対応できる力の育成を期待している。

 もう一つは,今日的課題性のあるテーマから価値を設定し,教師側からアプローチする学習である。これを総合学習Bと呼んでいる。この学習に取り組むことで,社会の変化に対応できる力と態度の育成を期待しているのである。総合学習Aは,子供一人一人が自分の興味・関心を大切にして,自分の選んだテーマで自分なりの学習を進めていくという自主的追究活動である。この活動を通して,以下の三つの力が付くことを期待している。

@子供が自らのテーマを設定し,追究していく過程では,問題解決に必要な情報を適切に選択する,情報活用能力が身に付く。
A試行錯誤しながらも自力解決をはかっていくことで,問題解決能力が身に付く。
B自分の想いを他へ伝えようとするために,話す内容や構成を検討したり伝え方に工夫をしたりすることで,自己表現力が身に付く。


 金大附小では,これらの力を身に付けていくことが社会の変化に対応できる力を養うことにつながると考えている。

 このうち@に述べられている「情報活用能力」については,第1章でも述べたように,単に自分にとって有益な情報を選択するばかりでなく,それを,整理し発信する能力までも含んで考える必要がある。また,情報を選択したり,問題を解決したり,表現したりするためには,「自分がどんな情報を必要としているか」「何を問題としているか」「どんなことを表現したいか」といった,自分自身の考え方を認識することが必要とされる。そういう自分の存在を確かめながら学習を重ねていくことによってこそ,前記の三つの能力の高まりが見られるであろう。

 従って,金大附小が,総合学習で高めようとしているこれら三つの能力は,広い意味での情報活用能力ととらえていいと,私は考える。



(2) 学習環境の設定

 総合学習Aは,学校裁量の時間「かしわっ子タイム」をあてている。月2回の活動時間以外にも,休日を利用して取材活動や調べ学習に取り組む子供もいる。また,長期間にわたる追究活動にしたことによって,子供が追究する時間を十分に保証することができ,計画的に活動を進めることが期待できると考えている。


 一方,総合学習Bでは,今日的課題性のある単元を教師が構想している。子供がこの単元の学習を追究していく中で,自分を取り巻く環境や社会の情勢,人の考え方や生き方などについて,自ら問題意識を持ち,追究を深めていくような態度を育てたいと考えている。追究していく過程で,社会の変化に対応できる力も育成できると考えたのである。

 総合学習Bに対する取組の中から,「生き方」につながるものを,価値として把握する事によって,「生きる力」が育成されるという考えなのである。

 総合学習Bに取り組んでいく上で,子供たちが直面するだろう問題,現代社会がかかえる問題としては,「環境」「人間」「国際理解」を考えている。

6年総合(国際)「なるほど・ザ・料理ワールド」の様子
インドと日本のカレーのちがいについて聞いている。


 総合学習Bの単元を構想する際には,体験的活動を重視し,大切にしている。従来から教科学習をはじめあらゆる教育活動の場でも体験的活動は取り入れられてきた。しかし,これまでの体験的活動は,どちらかといえば子供が知識や技能を効果的に獲得するための「方法」として取り入れられることが多かった。金大附小では,総合学習における体験的活動は,活動に取り組むこと自体が「目的」になると考えている。体験的活動に主体的に取り組むこと自体が,子供一人一人を豊かに成長させていくプロセスであり,子供にとっては学習そのものなのだと考えているのである。


 金大附小では,体験的活動を総合学習に取り入れることによって,次のような効果を期待している。

・意欲の高まりを生み,学習そのものを楽しくすることができること
・子供一人一人が,自らの身体を通して価値を体感できること。
・子供一人一人が共通体験していることで,他者とのかかわりを深めることができること。
・子供が様々な体験的活動を通して人間の生き方にふれ,学ぶことができること。

 体験的活動は,「生き方」につながるものへの気付きを生み出し,価値を把握する上で有効にはたらくと考えられている。


 なお,総合学習Bは,月に1〜2回の学校裁量の時間「かしわっ子タイム」の時間の他,関連する内容を含む教科の時間を総合学習Bの単元の時間として取り込んで実施している。




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