第2項  情報端末としてのコンピュータ


 インターネットの登場によって,コンピュータの可能性に新たな一面がつけ加えられた。

 インターネットというのは,簡単に言うと,世界的規模でコンピュータを結んだネットワークのことである。学校・企業内でネットワークを作り,それをさらに,電話回線などを介して他のネットワークにつなげる。そうやってチェーン状にどんどん広がっていくことによって,現在は網の目のように張り巡らされ,普及している。中でも,現在,最も一般的に活用されているのは,WWW(ホームページ)と電子メールである。

 ホームページでは,企業や公共団体等が様々な情報を発信している。企業の多くは自社の商品情報を掲載しているし,気象衛星「ひまわり」の衛星写真は,1時間毎に更新され,最新の気象状況を知ることができる。NASAのページをのぞけば,火星探査機「マーズ・パスファインダー」が地球に送ってきた写真をいつでも見ることができるし,文部省のページには中央教育審議会の答申が発表日に全文掲載され,新聞に載ってないところまで詳細に閲覧することができる。

気象衛星「ひまわり」の画像


 発信されているのは,文字に限らず,画像,動画,音声など,とてもマルチメディアな素材で,見た目にも楽しく,われわれ大人はもちろん,子供の目をも引きつけることができる。

 昨年度に発生したタンカー「ナホトカ」による島根県沖原油流出事故の際には,ボランティアの活動する様子が毎日リアルタイムで伝えられ,どこの場所でどれだけ人員や機材が必要かといった情報がやり取りされた。



 ホームページは日々新しいページが開設され,データも更新されている。「こういう情報がほしい」と求めるところがはっきりしていれば,インターネットは情報の宝庫と言えるであろう。もちろん,どれだけ探しても目的の情報が見つからない場合があるが,それは,図書館などで書籍による情報を求めてもみつからないことがあるのと同様であろう。肝心なことは,職場,家庭,もしくは,学校に居ながらにして,普段はなかなか連絡を取ることのできない様々な場所に,直接接触して情報を得られるという点である。



  一方,電子メールとは,インターネットを回線として使ってやり取りされる,デジタルなデータによる手紙のことである。コンピュータで文書を作り,それをインターネットを介して,相手のコンピュータへと送信するのである。送られた「メール」は,いつでもサーバ(インターネットの窓口になり情報を蓄えておくコンピュータ。メールを蓄えておくサーバをメールサーバという。郵便局の私書箱のイメージ)に蓄えられ,次回にコンピュータの電源を入れたときに,取り出して読むことができる。

 電話と違って,相手がその場にいなくても送ることができるし,伝えたいことが文書として残る。

 出先から電話回線を通して,写真やワープロのデータも送ることが可能なので,企業では,急速に普及している。

 営業の人が,会社には出勤しないで,朝から得意先をまわり,必要なデータがあれば,会社に電話をして,電子メールで自分の持ち歩いているノートパソコンに送ってもらう。商品説明のプレゼンテーションも在庫の確認も,当然パソコンを使う。こういう仕事の形態が,すでに日常化し始めている。




 また,「メーリングリスト」と呼ばれるシステムがあり,ある名前のメールアドレス(電子メールを送るための住所)に一通の電子メールを送ると,登録しているメンバー全員に,同じ内容の電子メールが送られる。例えば,「富山市小学校メーリングリスト」のようなものがあれば,文書交換を使って送付していたような文書は,短時間で簡単に全学校に送付することができる。




 では,これを学校教育で考えると,どんなことが可能だろうか。 インターネットが学校に入れば,従来はなかなか手に入れることの難しかった情報を入手できる。先述の「ひまわり」の画像のように,図書館にはない最新の情報を手に入れることが可能になる。

 文部省は2000年頃を目標に,全国すべての公立小中学校,高等学校にホームページを開設する計画を持っている。全国の学校にホームページが開かれれば,ホームページで知りあった学校を相手に,電子メールを使って沖縄の子供や北海道の子供と,意見のやり取りをするといった学習が可能になる。

 4年の社会科「暖かい地方のくらし」「雪国のくらし」などの学習では,生活者の生きた言葉を取り上げたり,自分のくらしと具体的に比較して考えたりすることもできるのである。学習の過程における可能性や選択の幅が,これまでよりもぐっと広がるのは確実である。



 また,官公庁の積極的な情報公開が求められる中で,「開かれた学校」のスタイルの一つとして,子供たちの学習活動の様子や各種の『たより』類をホームページに掲載することも考えられるだろう。家庭でもネットワークにつながった情報端末としてのコンピュータが普及していけば,いつでも自由にホームページを参照できるわけで,学校と家庭がより身近なものになり,精神的なつながりを強めることも可能である。

 『学年だより』は印刷・配布しなくても,ホームページに接続すればいつでも「今月の行事」を確認できるし,会社の休憩時間にホームページを開いて,学校でのわが子の活動の様子を見るということもできるようになるのである。電子メールで親からの感想などが寄せられるようになれば,子供たちの学習意欲も高まるであろう。



 世の中で,コンピュータの導入とネットワーク化が進んでいる以上,こういう環境が学校の中に導入されるまでに,そんなに多くの時間はかからない。そして,子供たちが大人になったころには,コンピュータは電話やファックスに代わる便利な情報端末機として,確実に身近な存在になっていることだろう。

 
 ここ数年の,ポケットベルや携帯電話の普及の速さを考えてみてほしい。特に携帯電話は,企業の予測をはるかに越え,97年度3月現在で使用台数が3000万台を越え,いまだに増加し続けているという。便利さや楽しさがわかれば,人は必ずそれを使うようになる。使う人が増えれば,当然使い勝手がよりよくなるよう工夫されていく。コンピュータにも,すでにそういう動きがおこり始めているのである。



 1997年8月20日のインターネット朝日新聞(朝日新聞社はネットニュース専門の編集部を設置し,ホームページ上で閲覧できる新聞を発信している。内容は常に最新のニュースに更新されているし,その日の『天声人語』も読むことができる。)に次のような記事がでている。

「郵政省は,インターネットを使って貯金・保険などの情報検索やふるさと小包などを注文できる『電子郵便局』を,1999年度中に,全国約3300の地方自治体すべてに広げる方針を決めた。さまざまな公共サービスをインターネット上で一括処理する 政府の『電子政府構想』に基づき,郵便局を,そうした公共サービスの『窓口』にしていこうとの狙いだ。自宅にパソコンがない人も,郵便局に来れば,無料でインターネットを使えるという。
 電子郵便局は,郵政省が97年度から推進し始めた新サービスで,実在する郵便局の『インターネット版』だ。」 


 このような,コンピュータの情報端末としての可能性から想像すると,電話ボックス内に,インターネットにつながる公衆情報端末機の置かれる日が来るのも,夢ではないかもしれないのだ。(すでにコンピュータを接続するための端子は多くの公衆電話に設置され,ノートパソコンを接続している場面も見られるようになってきている。また,フランスでは数年前から「ミニテル」という公衆端末機が全国に設置されている。



 さて,世の中の動きがそういう方向に進んでいるのに,「自分が使えないから」「好きじゃないから」といった先生の理由で,子供のコンピュータを使う機会を奪ってしまってよいものでろうか。未来を生きる子供に,有効にはたらくコンピュータの活用を,考える時期に来ているというのが,現在のわたしの考えなのである。



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