第3節  進む企業のコンピュータ化


 企業の中には,コンピュータを積極的に活用し,ネットワーク化を図ることによって経済効率を高めているところが多くある。2つの例を「コンピューターネットワーク(イミダス編集部)」より拾ってみよう。



(1)銀行のネットワーク

 銀行のキャッシュカードを持っていれば,北海道から沖縄まで,どこにいてもお金を引き出すことができる。稚内で入金したすぐ後に,那覇で引き出すことができるし,自分の取引銀行だけでなく,他行のCD(現金自動支払機)やATM(現金自動預払機)も使うことができる。それ以前は,振込や振替には数日という単位の時間を必要としていたが,ここ数年ほどの間に銀行業務はかなりの効率化が図られたのである。

 それを可能にしているのが,銀行のオンライン・システムである。1990年に都市銀行と地方銀行のCDとATMが相互に開放されたのをきっかけにオンライン化が進み,今ではあらゆる民間の金融機関がコンピュータ・ネットワークで結ばれているという。その中心となっているのがMICS(multi integrated cash service 全国キャッシュサービス・センター)である。都銀のBANCS,地銀のACS,信託銀行のSOCSなどの業態ごとのオンラインセンターは,すべてMICSにつながっている。

 オンライン化により,人件費をかけずに営業時間を延長することも可能になっている。都市銀行の中には午後9時まで営業する支店が増えたが,それを支えているのもコンピュータネットワークである。各行のコンピュータセンターが,遠隔操作で支店のシャッターを降ろして,照明も消す。基本的に午後6時以降は銀行員は常駐しなくなっているのだ。

 もっとも,トラブルが起こった場合,電話はコンピュータセンターにつながるようになっており,担当者がかけつけるのに30分ほどかかるという問題もある。 各行のコンピュータセンターは24時間稼働しており,オンラインサービスが終了すると,利息計算,定期預金の満期の案内,手形決済の準備などもコンピュータが自動的にはじき出すようになっている。



(2)JRのネットワーク

 高速かつ安全・正確に,日夜多くの人々を運び続ける新幹線。この新幹線の運行を管理する中央指令所でも,コンピュータは大きな役割を果たしている。


 新幹線の指令所といえば,各列車がどこにいるかを示す,壁面いっぱいの大パネルを想像する。しかし,東北・上越新幹線の運行を管理するJR東日本新幹線運行本部には,そのようなパネルは存在しない。コンピュータがずらりと並び,運行状況はその画面に表示されているだけである。

 同社は1995年11月,360億円の費用をかけ「ニュー新幹線総合システム」をスタートさせた。輸送計画から運行管理業務まで,すべてを中央指令所で一括して行うシステムである。

 そもそも,新幹線の運行は,従来よりコンピュータシステム化されていた。新幹線には信号機がなく,自動列車停止装置(ATC)によって,指示速度が与えられる。仮に速度オーバーしても,自動的にブレーキがかけられる仕組みになっていたのである。

 ニュー新幹線総合システムは,従来のシステムに加え,さらなる情報の共有化を図っている。

 例えば,新幹線が遅れたとしよう。かつては,ベテラン社員が机の上にダイヤを広げ,運休させる列車を決めたり,遅れをどこで取り戻すかを考えたり,いろいろ知恵を絞った。ところが今は,コンピュータが遅れを取り戻すプログラムをはじき出す。その結果は,ネットワークを通じて各駅に瞬時に伝えられる。さらにホームの電光掲示板にも自動的に情報が流れ,「何分遅れで到着の予定」と表示されるのだ。

 以前は,ダイヤが乱れると,運行の予想がつかず,旅客とのトラブルが生じるといった混乱もあったが,新システムでは,スピーディーに情報が共有されるので,サービスの向上にも役立っている。


 コンピュータによるシステム化は在来線でも進められている。首都圏の足となるJR東日本の1日の運行本数は,約12000本と過密である。特に,山手線は,混雑ピーク時には,ほぼ2,3分の間隔で事故もなく運行されているが,こういう,人間の限界を超えるような,奇跡に近い運行が可能なのも,コンピュータのシステムによるところが大きい。

 以前は手作業で行っていた運行業務は,1995年に「総合輸送システム」に切り替えられ,日々発生する運行計画の変更・追加を乗務員区,駅,保守区へ回線で伝送している。列車ダイヤや乗務員のスケジュールもコンピュータが作成してくれる。手作業で行っていたときにかかっていた,膨大な時間と労力を軽減することができたのである。




 このように,例を挙げればきりがないほど,企業の間ではコンピュータの導入がすすみ,普及の段階に入っている。 しかし,だからといって,今,われわれが学校教育という場で,個人レベルでコンピュータを活用した学習に取り組む必要が,本当にあるのだろうか。



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