登米市立北方小学校公開研究会 学力向上拠点形成事業(確かな学力育成のための実践研究事業)

平成19(2007)年9月28日(金)
 
富山市立山室中部小学校 教諭 笹原克彦


 宮城県登米市立北方小学校の「確かな学力育成のための実践研究事業」公開研究会を参観する機会を得た。文部科学省指定による研究事業の3年目に当たる今年の研究会は、これまでの研究の成果の集大成となる最終報告の機会でもあった。

 北方小では、ICT利活用による学力向上を意図した授業を、特別支援学級を含め、全学級が公開した。ここでは、全国に先駆け、学校ぐるみでICTの利活用を核に「分かる授業」のための授業改善に取り組んできた北方小の実践を、自分なりの視点でまとめ、報告としたい。

登米市立北方小学校とは
 北方小学校は、田園地帯と丘陵地帯と境目の小高い丘の上に位置する全校児童223名、9学級の学校。

 周辺には、ラムサール条約に登録された伊豆沼、内沼があり、豊かな自然に囲まれた学校である。

北方小の研究主題
 研究主題は、「学ぶ意欲とスキルと高め、確かな学力を身に付ける子どもの育成−知的好奇心を喚起する指導方法の工夫・改善を通してー」

 文部科学省は、確かな学力を「知識技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的の判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの」と定義している。北方小では、それら8つの学力の中から、「学ぶ意欲」「学び方」「表現力」に焦点を当てた研究を行ってきた。

 特に「分かる授業」を実践するための有効な手段として、ICTの利活用を積極的に行ってきた。また、単に機器を活用するだけではなく、授業での適切な発問・指示や、児童の学習態度の育成など、学習をささえる日常的な営みを非常に大切にした研究を行ってきた。

 「教師の授業力の改善なくして、児童の学力向上はない」を合言葉に、日々研鑽を積み上げた成果が、今回の公開研究会だった。

公開授業 
6年1組 社会

明治維新をつくりあげた人々
「2枚の絵をくらべてみよう」


ICTでねらう主な学力:思考力
 教科書に掲載されている2枚の絵を比較しながら読み取り、社会の変化を予想するのが本時の活動。明治維新前後の2枚の東京銀座の風景画を比較し、わずか20年ほどの間に、風景・風俗・文化が激変したことを話し合う授業だった。

 授業は、フラッシュ型教材の提示からスタートした。提示したのは、肖像画や人物像を見て歴史上の人物を答えるものと、画面上部に人物名、下半分は左右に分けて2つの出来事が書かれていて、人物に関係あるのは左右どちらかを答えるものの2つ。全員一斉に唱和し終わったところで、授業の導入として、文明開化期の代表的擬洋風建築「開智学校」の写真を提示。どこの国の建築物だと思うかと問うところへと、学習が進んでいった。
 
 フラッシュ型で復習をするところから、子供の意識がなめらかに本時の学習へとつながっていったところは見事だった。

 教科書の絵から気づいたことをノートに書き出した後は、ペアで一旦話し合ってから全体での話し合いに入ったり、授業の終末では、グループで考えを話し合ったりと、考えを共有し合う場面がいくつも用意されていた。 
 発問・指示も明確であり、45分の中で学習のねらいを達成することができたように思う。

 教科書の絵は、実物投影機で提示することも可能だが、「比較する」ためには、画面が変わってしまう投影機での提示は不適切である。皆川教諭は、拡大カラーコピーした風景画を提示することで、常に両者を比較するようにしていた。何でもICTというのではなく、適切な活用に配慮していることが感じられた。こういう「勘所」を得るには、ICT活用の豊富な経験と、授業づくりのための研修の積み重ねが必要だと感じた。

5年2組 理科

台風と天気の変化
「台風と天気の変化について調べよう」


ICTでねらう主な学力:思考力
台風による天気の変化と災害について、これまでの経験や資料をもとに話し合う授業だった。

 写真を見て台風からどんな被害が起こるかを予想し、検討することが学習のメイン。どのような写真か気になるところだが、数分しかいなかったので、そこは、確認できなかった。
 写真から読み取れることをベースにすることで、自分の体験をも重ねながら、多様な発言を引き出すことができたことだろう。

5年1組 国語

人間の生き方をえがいた作品を読もう
「マザー・テレサ」


ICTでねらう主な学力:
学ぶ意欲、学び方
 教科書に例示された「野口英世」の本のカバーから、カバーに書く内容を確認した上で、「マザー・テレサ」の紹介内容を考える授業。

 導入の「書く内容の確認」で、ICTを活用する場面を見た。教科書を提示して、人物名、筆者名、あらすじなど書かれていることを確認しスクリーンに書き込んでいく典型的な活用だった。
 教科書の画像を外すと、スクリーンには、本の紹介カバーのフォーマットが残る。それを利用することで、別の書籍に関しても、同じ内容で書けばよいことがわかりやすく伝わると感じた。

1年1組 国語

のりもののことをしらべよう
「いろいろなふね」


ICTでねらう主な学力:
学ぶ意欲、学び方
 フェリーボートの役目と構造を客船の文章と比較して読み取り、それをノートに書く授業。

 子供と同じノートを提示しているので、どこに何を書くのかが明確に分かる。
 段落の最初に1マス空けるところや、「ェ」をマス目の右上4分の1のところに書くことなど、1年生には、言葉だけで指示してもなかなか伝わらないところが、しっかりと行き渡っていた。

 子供たちは姿勢もよく、真剣にていねいに書いていた。そういう指導がしっかり徹底しているのも大事なことだと思った。

1年2組 算数

どちらがながい
「どちらがながい」


ICTでねらう主な学力:
学ぶ意欲、学び方
 机の縦横の長さを、「あた(指を開いた長さ)」や鉛筆、定規を使って調べ、いくつ分かを表す授業。

 授業の最後には、「共通単位が必要」という意識を持つようになっていることが、本時の目的だったようだが、活動で盛り込まれているので、楽しく学習できたことだろう。
 ただ、ワークシートの示し方がちょっと高学年ぽいなという印象を受けた。1年生ということもあるので、もう少し学習をナビゲーションするようになっていればいいなと思った。そのあたりは、教師の言葉掛けで支援されていたのかも知れないが。
 教科書の提示にはスクリーンを使用。書き込む必要がなく、黒板を広く使いたいときにはこういう活用もいいなと思った。

4年1組 社会

古い道具と昔のくらし
「道具のうつりかわり」


ICTでねらう主な学力:表現力
 道具の移り変わりから、人々がよりよいくらしを願って改善してきた成果であることを理解する授業。

 社会科のこの単元では、最も大切な学習内容だ。

 導入では、フラッシュ型教材で、行灯、炭火アイロン、たらいなどの古い道具の名前を確認した。
 今時の子供たちには、なじみの薄い道具ばかりなので、名前をしっかり知っておくことは教養を深めるという点でも重要。

 この授業では、提示されていた「しわくちゃの手」の画像にインパクトがあった。こういう手をする人は、家事をするのが大変だということは容易に想像がつく。一問一答式にしなくても、それらを想像して話し合うだけで、深まりのある展開が可能になる画像だった。
 この教室には、実物もたくさん持ち込まれており、これまでの学習歴も掲示してあった。言葉だけではなく、体験や実際の事物を大切にした実践が行われているなと感じた。

特別支援 算数

長さをはかろう
「長さのはかり方」


ICTでねらう主な学力:知識・技能
 1cm目盛りのものさしを使った長さの測定の仕方を理解する授業。大きく見せることで集中できるし、理解もしやすくなるので、とても効果的だった。

 教師の想定以上に理解は進み、用意していた課題が全て終了してしまった。
 その場で教師が新たな問題を作成し、提示していた。簡単に課題を追加できるあたりに、ICTの日常化がかなり進んでいることが伺われた。

2年1組 国語

たのしいお話をたくさん読もう
「名前を見てちょうだい」


ICTでねらう主な学力:学ぶ意欲
 林で出会った大男の恐ろしさをきつねや牛の態度から読み取る授業。
 
 ちょうど、大男を提示する場面で教室に入ったが、これまで朗読してきたはずなのに、スクリーンに提示された大男のイラストを見て、教室内は騒然。
 さらに、目や舌が動いたりするものだから、子供たちは口々に「怖い」と言い合った。そこで何人かの子供が交代できつねや牛の役になり、大男に対する言葉を役割演技しながら朗読した。

 子供たちは、恐ろしい大男を目の前にしてしどろもどろになるきつねや牛の気持ちをしっかり感じ取ることができた。「学ぶ意欲」という点では、とても効果的なICT活用になったと思った。

3年1組 国語

あまりのあるわり算
「あまりのあるわり算」

ICTでねらう主な学力:学ぶ意欲
 3年生は、少人数指導による算数の学習だった。14÷3の答えの見つけ方を、既習のわりきれるわり算の解法と結びつけて考えさせる授業だった。

 教室コースでは、子供たちの考え方を書いた紙を提示し、その方法を比べていた。投影するだけでは、違った考えを比べることができないので、このように、書いたものを提示しておくことは大切だと思う。それにしても、この紙はいつ書いたのだろう。この時間に書いたのだとしたら、子供たちの表現力はかなりのものだ。

 一方、学習室コースでは、教科書を提示し、重要なところにアンダーラインを引いた上で音読をしていた。これもまた典型的な活用だが、子供たちの意識を集中させるには、一つの画面を見ることは有効だと思った。

全体を通した取り組み

 この研究会の参加者200名の内、1割以上は県外からの参加だった。
 
 県外からの参観者控え室に日本地図が貼ってあり、参観者の所属県が赤く塗りつぶしてあった。作ったのは6年生だろうか。横には子供の字で、「ゆっくりご覧ください」とあった。子供たちも、この公開研に情熱をかけていることが伝わってきた。

 今回の公開研で最も素晴らしいと感じたのは、全教員が主体的に研究会にかかわり参加しようとしていたこと。

 県内外から児童数と同じ数だけ参観者がある中で、全員が授業を行うというのは、相当なプレッシャーだと思うが、それを乗り越えるための、周到なICT活用場面の検討がなされていたのは、素晴らしいと思った。

 北方小では、子供の学力向上を実現するための全校体制による取り組みが、いくつも見られた。

 以下に、自分が気がついたものをいくつか報告する。 

 どの学級も、机上には、鉛筆、赤青鉛筆、消しゴム、ものさしが並べられており、他のものはペンケース共々しまわれていた。

 6年では、びっしりと付箋の貼られた国語辞典も机上に置かれていて、教科を限らず、いつも活用していることが見て取れた。
 教師も線を引くときは、ものさしを使う。

 おそらく、ノートに線を引くときには、ものさしを使うよう指導しているのだろう。そうだとしたら、教師が範を示すことは大事だと思う。
 どの学級にも同じマグネットがあった(下学年はひらがなだったけど)。課題、予想など、板書に使う言葉が学校全体で統一され、そのためのマグネットが用意されている。

 学校全体で揃えておくことで、学年が上がっても、学習方法に継続性が生まれる。
 学習の習熟を図ったり、学習を補ったりするための時間が、「寺子屋タイム」として確保されている。
 学習の進め方も示されている。
 ICTを活用した、学習が楽しくなる環境づくり。
 こんな風に、学習が記録されていると、振り返るのも楽しい。
 情報活用の実践力の高さを感じる掲示もあった。

 情報教育的な指導も大切に行われていることが伺われた。
 ノートの使い方指導も、かなり徹底して行われている。


 
Sasaの情報教育紀行    

カウンター