松山市立清水小学校公開研究会 (生活科・総合的な学習教育研究協議会)

2005(平成17)年11月18日(金)
 平成17年度の生活科・総合的な学習教育研究協議会は、松山市で開催され、3つの小学校で公開授業が行われた。
 松山は、城のある山を四方にぐるりと囲む形で町が広がっている。清水小のある地区は、城の北側で、古くから町として栄えた場所であり、大学や高校が並んで建っている文教地区でもある。このような地域をフィールドに、どのような学習が進められているかに興味をもち、松山市立清水小を訪れた。

 グランドにて受付。富山からの参加は自分一人だった。
 グラウンドには、駐車のための区切りが引かれている。会場準備その他で、保護者の協力が手厚いことが感じられた。
【公開授業】9:00〜9:45
 1校時だけの公開だったが、一応一通り全ての授業を見ることができた。1,2年生は生活科の、3〜6年生は総合の授業を公開していた。5年生は環境と福祉を、6年生は国際理解をテーマとする学習と聞いたので、ここを中心に参観した。

5年 人や環境にやさしい街にしたい、人がやさしい街にしたいU
 5年は、清水の環境を考えるといった内容で、これまで調べて来た成果を発表する時間だった。学年を解体し、環境、福祉の2つの分科会に分かれて授業に臨んでいた。いくつかのグループの発表を聞いた後に、発表を聞いて感じたことを話し合う時間だった。
 子供たちは、これまでの体験を基に、用意した掲示資料を示したり、画像や動画などをプロジェクタで提示したりしながら、自分の主張を伝えていた。
 これまでの時間も、いくつかの班の発表を行ってきており、今日がその最終回だったようだ。35分余りの発表の後、話し合いが進められた。
 子供たちの間にある「清水の環境を良くしていきたい」という思いが、話し合いのベースになっているように見受けられた。
 これまでの発表を通して、子供たちは、他の班の子供たちの地域にかける思いに触れることができたようだ。この話し合いの結果、「自分たちにできることは何か」という、『実践にかかわる思い』へと結びつけることができたかは、気になるところだ。
 そもそも、子供たちがそういう思いを抱くことになるまでに、教師はどのような手立てを打ったのだろう。また、教師自身が、本時の目的と全体計画の中での位置づけをどう考えているか、最終的な落とし所(育てたい子供の姿)をどう考えているかについて、もう少し分かるとよかったなと思った。

6年 日本の文化再発見 パートU
 6年は、外国人ゲストティーチャー(GT)を招いて、それぞれの国の文化等について話を聞く時間だった。3つの教室には、それぞれ、3人ずつのゲストティーチャーがいて、子供たちはじっと話を聞き、質問したりしていた。
 GTといえば、学習の進度や目的に応じて教師がアポを取り、事前に学習内容を検討した上で、招くことが多い。しかし、清水ではGTになりうる人材を見つけ出してアポを取り、今日の学習に自分たちで招待するという活動も、学習の一貫になっている。自分の気になる国のGTを自力で探してきたため、真剣に話に耳を傾けていたように思う。
 今回招かれた人々が、その国の全てを代表するわけではない。アメリカ人のGTが「わたしには、アメリカがどんな国かといわれても、正直言うと分からない。アメリカは、るつぼのような国だ。」と、自分の語ることが全てではないんだ、というメッセージを伝えているのが印象的だった。
 教室内には、これまで、調べてきたことを掲示してあったり、今日の学習のためのデコレーションが凝らしてあったりと、学習環境がとても工夫されていた。
 自分の調べた国は1国であるはずだから、それ以外の国の話は、関心(関連)に応じて、選択できればよいと思った。GTのタイムスケジュールを固定して、移動しながら聞くといった手立ても考えられる。各グループに3組づつゲストがいたわけだが、彼らにとっては、どういう意味のある時間になったのか、聞く機会がなかったは、残念だった。
 
 また、5年と同様、本時でねらいたかったことは、具体的にはなんだったのか、学習の最終的な落としどころがどこなのかが、気になるところだ。
 日本の文化再発見と言うからには、日本との比較や、自分たちの文化をこれからどう考えていくか、という方向に向かっていくのだと思うが、人と出会ったその先にどんなことが待っているのか、楽しみになる学習だった。

2年 ぼうけん はっけん まちたんけん パート2
 2年生は、これまで何度も道後温泉へ行った体験を基に、教室やベランダに道後温泉を再現して、お客さんを迎える活動を行っていた。
 2年生の実践では、自分たちの感動や考えをゲストに伝えるための、内容や方法が良く吟味されていた。自分たちが楽しむだけでなく、参加した人に楽しんでもらおうとする相手意識がとても高い。子供たちはとても鍛えられている印象だった。こちらの方が、総合的な学習に一番近かったかも。
 道後に伝わる伝説を劇で再現。椅子も用意されていたり、演技の声の大きさを工夫したりと、とても相手意識のある活動になっている。「遊び」としての活動を超えているように思った。
 教室・ベランダには、ビニールテープで作った路面電車の軌道が張り巡らしてあった。
 子供たちの運営する、「坊ちゃん列車」が、お客さんを乗せて、その軌道を行ったり来たりする。元気な子供の多いグループみたいだが、活動の目的(楽しんでもらう)がはっきりしていた。
 本物を模した駅舎の大きな絵が、段ボールに描かれていた。

 比較のために、本物の写真を並べてみた。現地に何度も出かけて取材したことが、掲示環境の様子を見るとよく分かる。
 道後温泉前商店街を模して、お店がいくつも開店していた。 
 それぞれの店の人から、その仕事にかける情熱や願いを吸収してきていることが、良く伝わった。
 店の商品を、紙粘土で表現。実際に売っていたのかな?だとしたら、買えばよかった。
 道後温泉のシンボル、からくり時計。口上とともに、子供たちがからくりを動かす。
 中の細部まで良く表現されていた。1時間に1回しか開かないからくりを、子供たちはいったい何回見たことだろう。
 道後のメインといえば、道後温泉本館。つかった気分に浸れるように、温泉が用意されていた。
 各所に設けられたスタンプコーナー。スタンプラリーデスクがあって、用紙を発行してくれる。

 こういう観光の工夫に目を向けられる子供がいるというのは、社会を見る目が高まっている証拠だと感じた。
 なんと、観光案内所まで設けられている。道後・松山の観光が、子供たちの意識に根付いている。

1年 あそぼう あそぼう あき
 1年生は、教室や中庭に「秋の秘密基地」を作る活動を行っていた。

 材料がふんだんに用意され、子供たちは思う存分活動をしていた。
 外に、こういう活動フィールドを、段ボールのような素材で用意できるのは、瀬戸内ならではの気候のおかげ。
 そういう点からも、地域性を生かした単元といえる。
 集めた材料は種類毎に分類してある。子供たち自身が集めたのだろうか。
 1年生に限らず、各所で、大学生や保護者がスタッフとして一緒に活動する姿が見られた。
 日頃から、地域と連携する体制ができあがっているのだとしたら、それは素晴らしいことだと思った。

3年 どきどき 清水のすてきな出会い
 3年生は、地域の方々との交流を、4年生は、併設されている社会福祉施設「いきがい福祉センターしみず」のお年寄りとの交流を行っていた。どちらも人と人とが大変強く結びついており、大変素晴らしかった。しかし、本時からは人とつながることそのものが目的化している印象も感じられた。生活科の延長としての総合というイメージなのだろうか。

 3年生は、地域に住む名人から「技と心」を学ぶ学習。
 今後は、学んだ成果をまとめ、地域や校内に発信していく学習へとシフトしていくようだ。
 伝えたいことが蓄積しているだろうから、活動はスムーズに進むし、子供たちの伝える力も高まるだろう。

4年 ふれあおう心と心 パートT
 生きがい交流センターは、学校と一体化している施設で、ドア1枚で隔てられているだけ。行き来は容易で、普段から交流が行われている。
 本時は、お年寄りから、伝承遊びや手芸等を教えてもらう時間。頭を付き合わせ、間近に話を聞きながら、先人の知恵を聞き入れていた。
 体の大きな男の子が、「俺、○○さんとも握手してこよう。」とつぶやきながら、相手を求めていく姿が印象的だった。別れ際、涙ながらに手を握る姿は感動的だった。
 心情がとても高まっている。人とかかわることの良さを体験的に会得している。学習がこの後どうなっていくかはともかく、体験そのものが学びになっている好例だと思った。

会場校全体会
 高学年の協議会は、体育館にて行われた。本時に至るまでの児童の姿を中心に話が進んだ。
清水小の研究について 「豊かな体験を通して生きる力をはぐくむ学習の創造

 地域に根ざし、「ひと・もの・こと」に豊かにかかわる体験を通してやりたいことに出合える児童の育成を目指している。やりたいことに出会うことで、できる自分に出会うことが出来る。繰り返しかかわることで、かかわりの広がり、深まりが起こる。

指導講話       
(島根大学教育学部 
    加藤寿朗助教授)
1 清水小の実践から学ぶこと

・21世紀の学校協力という観点から
@「できる」という子供を育てる生活科・総合
 生きがい交流センターの雰囲気。学校は箱なので、その空間をどう演出するかが重要。最初からうまくできたわけではない。できるようになるということが大事。
 これまでは知ること分かることが目的だった。21世紀は「できる」ことが学習内容になる。
できる力の主観的側面=自身・意欲・信念
できる力の客観的側面=知識・技能、
 教師が教えても身に付かない。体験しないと身に付かない。

A繰り返しながら学ぶ生活科、総合
 同じ単元の中で、学年を超えて。なぜ繰り返しを大事にしたのか。子供の考えを受けとめる。

 詰め込み教育の反省。子供の学びに即した学習を可能な限り実現していこうとすること。そのときに、子供はどう学ぶのか。そこが分からなければ授業はつくれない。子供は十分には分かっていない、偏って分かっている。わかり直しをしながら分かっていく。

B地域に根ざした授業作り
 子供は飽きる。飽きさせないような仕掛けが必要。活動を様々に変え、空間を広げながら活動していく。地域への見方を変えていく。大人もそうしていく。学ぶことを実感できる。


2 それを踏まえてこれからの生活科、総合の課題

@子供研究を今一度
 子供の学びに可能な限り即した授業の実現。そのためには、子供の学びの筋道を問い直す必要がある。

A育てたい学力を子供の視点から問い直す
 大人の視点からの学力ではなく、子供にどんな力をつけなければならない。育てたい力を再吟味する必要がある。見通す力、企てる力など。社会が必要とするから、ではなく、そういう社会で生きるこの子にはどういう力が必要か。


 総合も生活科も安定期ではなく、今から充実させていく時期に当たっている。

 首から下げる参加証のカードは、子供たちの手作り。

 会場の後ろの休憩スペースには、みかんが山積みにされ、自由に食べられるようになっていた。さすが、愛媛。
 体育館には、これまでの実践の歩みをまとめたパネルが並べてあった。
 先生方のご苦労が忍ばれる。

松山市立清水小学校の気になる学習環境
 正面を入ると中庭にはフラワーパークがある。鉢植えのサルビアがきれい。葉ボタンを植えるというのは、富山にはない感覚だ。
 校歌を焼いた煉瓦。

 壁のない廊下。ベランダが廊下の代わりをしているという感じ。これも、雨の少ない地方ならではの構造である。
 体育館と校舎をつなぐ廊下は、外への通路にもなっている。内履きで歩く場所と区別するよう、色で塗り分けられていたのが、印象的だった。
 学級のボールをおいておく工夫。こんな方法があったかと、目から鱗。