平成15年度熊本大学教育学部附属小学校研究発表会

富山市立寒江小学校 笹原克彦

 2004年2月6日に公開された熊本大学教育学部附属小学校の研究発表会に参加した。
 当日は、かなり冷え込みがきつい日だったが、1000人を超える参加者と子供たちの熱気が、それを吹き飛ばす「熱い日」となった。以下に、研究会で学んだことを報告する。
 なお、ここに書かれていることは全てわたしの私見であり、文責は全てわたしにある。表現等に不適切な部分があれば指摘していただければありがたい。
【研究主題】

学びが好きになる授業の創造
〜ITの活用を図りながら〜

【公開授業T】

 1限は、5年算数を中心に5年音楽などを参観した。
 5年算数は、円の面積の公式をデジタルな操作を取り入れながら考える授業。扇形に刻んだ円をこれまで学んだ形に置き換えて考える。紙での操作とちがって、すき間なく敷き詰められるし、空気の流れでとばされることもなく、何度でも置き換えることができるのがよさだと思う。
 それぞれの形の公式から導き出した円の面積の求め方を、ひとつの公式に集約していく子供たちの思考の論理性の高さに驚いた。
 5年音楽は、シューベルト作曲「ます」の変奏の順番を入れ替えることによって、感じ取りながら鑑賞する授業。変奏ごとに曲をいくつかの部分に分け、簡単に入れ替えて再生するというのは、デジタルならではの使い方だと思う。意欲を持続させながら、変奏によるテンポや強弱の違いをしっかり感じ取ることができる、効果的な使い方だった。
 2年算数。九九の中から、答えが同じでも式が1つしかないもの、3つ以上あるものを見つけ出す(例えば、21=7×3、3×7と2つあるが、9=3×3しかない。16=2×8、8×2、4×4の3つがある。)。子供たちの発言に合わせてスマートボード上の表をタッチし、数字を表示していく。
 紙のメディアでもできることだが、ITを使うことで、ビジュアルに楽しめるし、色分けしてグループ化することも容易なのがよい。九九の中には、同じ答えでもいくつもの式を持つものがあることを理解する、という学習のねらいを、教師が明確に持つことが大事なのだと感じた。

【公開授業U】

 2限は、6年社会科を中心に参観した。
 ユニセフを切り口に世界と日本のつながりを考える単元の第1時間目であった。ユニセフ協会の方のインタビュー映像は、教科という限られた時間の中で、少しでもリアルな感覚をつかむためには有効だと感じた。
 5年家庭科では、ミシンの正しい扱いを理解しながら作品を作る。返し縫いのうまくできた画像とできていない画像を提示して、どこがちがうか、なぜそんな違いができたかを予想した後、実際にミシンを操作して試してみる。最初に見せた画像は動画になっていて、それを再生することによって、正しい扱いがストンと心に入って来るという、コンテンツを効果的に活用した授業だった。
 熊本大附属小でのコンテンツ活用の考え方は、不完全な情報を提供することによって、どこに問題があるかを子どもに意識づけるというものであった。今回見た家庭科での活用は、動画自体は完全なものだが、その見せ方を工夫することで、不完全な情報となり、子供たちに留意すべき点はどこかをしっかり意識づけていく上で有効だった。
 5年理科。シュリーレン現象を動画で見くらべる授業だったが、写真のように、机の上に登って参観している先生もいる始末。あまりの混み具合に参観を断念(^^;)。

【教科等分科会】

 分科会は、高学年社会に参加した。
 UNICEFと自分たちのくらしとのかかわりに視点をあて、自分たちにどんなことをができるかを考えさせたいという担任の願いがあり、その点について子どもたちが考えていくための支援の在り方はどうあればよいかについて検討した。
 実際に国連のために活動している人との出会いの大切さと、その手段としてのIT活用のよさを中心に話が進んでいった。ゲストティーチャーは、実際に来てもらう、相手を訪れるなど、直接会えるに越したことはないが、その実現が難しいときには、今回のようなビデオ映像を用意しておくと、子どもたちの思考を支援する大切な教材になりうると感じた。

【総合分科会】

 午後の「総合的な学習」の分科会は「情報」に参加した。ミニプロジェクトを解決する過程で情報活用の基礎的な操作を身につけたり、問題解決学習の流れを学んだりできるという点で多いに共感できる部分があった。「情報」の時間に身につけた「問題解決学習を進める力」を、他のプロジェクト学習に活用しているとのことであり、本校でも情報のカリキュラムを構成する際に、そういう点に留意していきたいと感じた。
 授業のねらいにマッチしたコンテンツが、Web上ではなかなか見つけにくいという現状があるためか、熊本大学附属小で使われるコンテンツは、ほとんどが自作だった。明日にでも活用してみたいと感じるコンテンツがたくさんあり、CD-ROMに収められているものもあるので、わかる授業のために、生かしていきたい。


【全体会・シンポジウム】

 シンポジウムでは、教育情報ナショナルセンター所長の清水康敬先生、金沢大学教育学部の中川一史先生が登壇された。前田研究部長をコーディネータに、学校の情報化の現状やIT活用の日常化をどのように進めていくかをさまざまな事例を基に討論していた。コンテンツ活用にはさまざまな目的やパターンがあるが、どちらにせよ、コンテンツを使うことが目的ではなく、授業のねらいを達成するためにコンテンツが使われることが一番の目的であることを強調されていた。
【まとめ】

 熊本大附属小の研究会は、全校体制でのデジタルコンテンツの活用だった。全ての教師が活用を日常化しようとしている点、授業としての目的があってそれを実現するための活用になっている点が、とても素晴らしいと思った。何よりも、附属小がここまでIT活用を全面に出している、ということに大きな意味があると感じた。家庭科や音楽での活用はとても効果的で、学習の深まりや効果的な理解を促す場面がどういうものかを、うかがい知ることができた。
 今年度の発表では、自作のコンテンツを活用する場面が多かった。いずれも、素晴らしいコンテンツばかりで、是非自分の授業の中でも活用したいと感じるものばかりであった。今後もコンテンツが充実していくことを期待する。

 ただし、自作のコンテンツは大変有効であるが、日用化することを考えると、毎回自作するのは無理がある。世の中には、かなり多くのコンテンツが公開されてきているので、IT活用の日常化を考えると、それらすでにあるものを積極的に生かした実践というのも是非見てみたいものだと感じた。翌日にあった、2005年の会in九州での実践発表でも、「コンテンツ=自作」みたいな風潮を強く感じたが、文部科学省もコンテンツの整備には力を入れているので、「今あるものの生かし方」を考えていくことも大事だと思う。(あまりよいコンテンツがないとしたら、それを評価していくことも含めて。)

【表現にもデジタルのよさを】

 ルネ・マグリットの代表作「大家族」をモチーフにした作品。輪郭を取り込んだり、自由な色彩で彩色したりということもデジタル表現ならば容易である。

【学習環境】
 社会見学等の学習の成果をまとめた新聞が、コンクールという形で評価されていた。
委員会等で製作されているらしい掲示の数々。
階段の踊り場には左のような作品が、さりげなく飾られていた。
図工室前の掲示。作品製作の工程が、写真で紹介されていた。
リアルにレプリカを作る。世界の料理というのがみそ。図工を通して国際理解。
ハンバーグの表面は薫製などに使う木のチップ。
 英語学習のフラッシュカード。イラストは見てのとおりの前田先生作。
 裏に小さな磁石を付けて壁面に掲示。はずしてそのまま授業にも使える。
家庭科室横には、道具の基本的な扱いを、写真入りで紹介。
これも、ひとつのデジタルコンテンツかな。
古くなったテニスボールで椅子の脚の先をくるむ。椅子を引いてもがたがた音がしなくてよい。

【おまけ】
 熊本といえば、熊本ラーメン。連れて行ってもらった店があまりにうまかったので、ついでに紹介。
 。「好来(ハオライ)」は、豚骨なのに真っ黒いスープ。でも口当たりはまろやかで、しっかりしたうまみがある。煮卵、キクラゲ、角煮、レンコンの入った全部入りをいただいたが、スープまでしっかり完食。このラーメンだけで、熊本に来た甲斐があった。
 福岡駅の壱岐料理店にて。ウニ入り炒り卵とウニと明太子がのった丼と生のからすみ。後者は初めての食感。
 2月8日(日)。熊本を出る日は晴天だった。ところが、富山にたどりつくと、駐車場には雪だるま状態の車の列。7日の雪がひどかったらしい。